民家再生リフォーム
文 塚本康仁
こちらの建物は築120年、木造2階建てです。
そして私の高校時代の友人のご実家でもあります。
築120年ともなりますと、家自体も年相応に傷んでますので新しく立て直す方が良いとの考え方もできますがご家族にとって生まれ育った家という思い入れも当然お持ちになってます。
ただ、相当傷んでる個所もありましたので今回は総リフォームではなく、新築とリフォームの融合という形で全体の調和の取れた仕上げとさせていただきました。3ヶ月間、現場に付きっ切りで作業に従事した目線から普段見ることのない裏側をご紹介させていただきます。
今回の作業は大きく分けて
点線右側リフォーム部
点線左側新築部
の2つの作業に分けられます。
当初、新築部もリフォームの予定でしたが主軸部分のダメージが大きかったので
直すとなると一度全部解体して組みなおす作業が必要となり、費用・時間共に相当に要しますのでお施主様にご了承して頂き新築とさせて頂きました。
今回の作業で改めて思ったのはリフォームの難しさです。
正直申しまして、新築ほど簡単なものはありません。
新築は法規を厳守しさえすれば自分の好きなように作業できますが、リフォームは建物に合わした作業が必要となります。
職人が違えば施工方法も多かれ少なかれ違います
。
当店はリフォーム専門ですので様々な施工方法を見て参りましたが、今回も作業に携わることで今まで経験したことのない体験をさせて頂きましたので大変勉強になりました。
それでは作業内容をご紹介させて頂きます。
こちらは新築部の解体作業の様子です。
先にも申しましたが、当初はリフォームの予定でしたが傷みが激しいので新築に変更しました。
画像ではわかりにくいですが、柱から桁が外れています。
この近辺の2階部分には上がれない状態でした。
解体は裏庭から行いました。
まずは片付けからです。
階段は京町屋独特な急勾配でした。
解体も終わり、整地した状態です。
この後は基礎工事に移ります。
次に、リフォーム部の解体作業です。
こちらは新築部と違って機械で一度に解体とはいかないので全て手作業になります。
リフォームですから軸組みは残すので、現状の様子を見ながら作業を進める必要性もあります。
作業を進めて分かったのですが、使用している木材は古材を使ってることがわかりました。
つまり、建物は築120年ですが使用木材に関しては、それ以前の物だったのです。
画像の部位は床下地の根太・大引です。古材の上、材料も細いです。
通常、大引は一本物ですが古材ということもあるのか継いであります。
古材というと悪いイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、築120年の建物でも地面と接してる部分以外はほぼ腐ってるところはありませんでした。
木の生命力の強さを改めて教えられました。
ですが、力が掛かる部位での継ぎ物はいただけません。
そういう部位は全て新しい物に入れ替えます。
外部のトタンをめくると下地が出てきました。
横揺れを止める筋交い等はないに等しい状態でした。
上の画像を見てもわかるように柱の足元が腐ってます。
このような施工では腐って当然だと思います。
中にはレンガを積み上げたところに柱を置いてるなんていう個所もありました。
もちろん、今はこのような施工はしません。
床部分の撤去が終わったところです。
解体・整地も終わり家を建てる準備は出来ました。
こちらでは棟上以前の基礎工事からご紹介させて頂きます。
棟上の様子はご覧になる機会もあることと思いますが基礎工事はなかなかご覧になる機会はないと思います。
以上が基礎工事の工程です。
画像では見難いですが鉄筋は当然、きっちり入ってます。
今後、この基礎が家を支え続けるのです。
基礎も出来上がりましたので、いよいよ棟上です。
今はクレーンを使って作業するので工期もかなり短縮できますが、昔は全て手作業です。
上の画像の「おかめさん」には通常、棟梁の名前を書くのですが
今回は私の名前と主として施工してくれる大工さんの名前を
残させて頂きました。
今後ずっと私が責任持って面倒見させていただくという誓いの表れとして残させて頂きました。
それでは、リフォーム編をご紹介させていただきます。
私は主にこちらの作業に従事してましたし、当店メインのリフォームですのでこちらを重点的に書きたいと思います。
とはいえ、新築部のチェックも欠かさずですが・・・
構造部の大半は仕上げが終わると隠れてしまうので後から補修等は難しい個所です。それゆえに施工の重要性も高くなってきます。
見えないから手抜き・・なんてことは絶対許されません。
予想通り、瓦を下ろすと下地はかなり傷んでました。
垂木を全部やり直した上で、構造用合板を張れば瓦の下地は完成です。
これはジャッキで家を持ち上げて土台を入れているところです。
今の家は、コンクリート基礎・土台・柱となっているのですが柱が直接地面の石に置いてあったので、柱下部を切断し土台を入れました。
画像ではありませんが、この後配筋・コンクリート基礎を行ってます。
家中の束石・束・大引きも全て入れ直しました。
元々あった大引き等は耐力的に不安があり、水平も取れてなかったので全て入れ直しました。
もちろん白蟻対策も必要です。
左が古い梁等が残ってる解体後の状態です。
正直、この状態を見たとき「これ、新築にした方が楽やな・・」と思いました。
しかし、屋根部の作業が始まっていたので後戻りはできません。気合を入れ直した瞬間でした。
金物もバッチリ入れてます。検査でもお墨付きを頂いてます。
ここまでくれば家内の構造材はほぼ新しくなってます。
台所の木下地です。
ここにタイルを圧着張りします。この辺りは全て私がやってます。
新築・リフォーム接合部のフローリングです。先に新築のフロアーが張れていたので目地の通りを出すのに苦労しました。
上の木下地にタイルを張った状態です。
この後、システムキッチンを据えれば完成です。
ちなみに、タイル張りもキッチン据付も私がやってます。私はいったい何者???実はこの部屋のクロスも張ってます
ここまでくれば大工工事はほぼ終了です。
画像ではあっと言う間でしたがここまで仕上げるのに試行錯誤の連続でした。
この後は左官工事等の仕上げ作業に移ります。
これは掘こたつの設置の様子です。
堀こたつを設置する場合は底部が床面より下がりますので根太・大引き等の施工も考慮が必要となります。画像は断熱材を設置してる様子です。
この後はこたつユニットを据えれば完成です。
こちらは、玄関周りのサッシの取り付けの様子です。
元々は4枚引きのみ木製建具で他ははめ殺しでしたが今回は通風を考え、全て開閉可能な引き違いサッシにしました。
防水テープ等の防水処理も行っています。
白木のままだとかなりマッチングが悪かったのですがペンキを塗ればこの通り!
古い木と新しい木の違和感がなくなります。
玄関の踏み石ですが、薄っすら汚れてました。
庭の踏み石なら味が出ていいと思いましたが玄関内なので水・金ブラシでゴシゴシ擦りました。
薬品に漬ければ真っ白になるらしいのですが、もし変色でもしたら・・・と思って・・・
玄関のタイルも張れて完成間近です。
おまけですが・・・
玄関横のサッシの上に欄間があります。
当初は4mmのベニヤ板が張ってありました。
今回、9mmのベニヤにペンキ塗りにしようという話でしたが、表に面してるということもあり欄間を作ることにしました。
使用材料は間柱に使用するいわゆる荒材です。
下地材として使用するものでもちろん化粧材ではありません。しかも今回の作業で出た廃材です。
ですが、使い方さえ考えれば今回のように有効に使えます。
まずはかんな掛けからです。表面をきれいにしたらほぞを切ります。
その後はトリマーという道具を使い面取りします。そして組み立てとなります。
仕上がりは以上のような感じです。
捨てればゴミ、でも少し考えたらこういうこともできます。
これからも出来る限り、無駄を省いた仕事をして参りたいと思います。
ちなみに、この欄間の押さえ縁も荒材を削って作りました。
外部の仕上がっていく様子をご覧下さい。
これを見て頂けましたら、下地から仕上げまでどのような工程を経てるかわかると思います。
こちらは道路からセットバックしている部分です。
普通にコンクリート仕上げにしていますと路上駐車する車に壁を傷つけられることが考えられましたので
石を置くことにしたのですが、道路から見える部分なので遊び心の詰まった作庭(つかもとあけみ作成)をさせていただきました。
着工から3ヶ月、完成を迎えることが出来ました。
室内に関してはリフォーム部も新築状態になりましたが玄関部分は改装前の面影を残しています。
今回、この工事を通じていろんなことを勉強させて頂きました。
私自身、建築業界に従事して16年が経ちましたが、やはり一生勉強なのだと改めて思いました。
今回の貴重な体験は私自身の今後に通じる大切な経験になりました。この仕事を当店に依頼して頂きました御施主様には本当に感謝の気持ちで一杯です。
本当に有難う御座いました。
そして、今回の長きに渡る記事をお読み下さいましたお客様、本当に有難う御座いました。